残された私と孝太くん。
私達だけで空ちゃんの元へ向かおうと思ったけど・・・・・。

「俺って、何様なんだろうな」

「え?」

その孝太くんの言葉は小さ過ぎて、私は上手く聞き取れなかった。

だから、もう一度孝太くんの言葉を聞こうと思ったけど・・・・・。

「悪い、俺も帰るわ。やっぱり俺も、空の側にいる資格なんてないだろうし」

そう言って孝太くんは私を置いて生徒玄関から出ていく。

ってどこ行くの?

「孝太くん!ってか嘘だよね?」

私は校舎から出ていく孝太くんを呼び止めようとしたけど・・・。

孝太くんから聞こえたのは、私への嫉妬する声。

「お前はいいよな。嘘の付けない真っ直ぐな人間でよ。本当にお前が羨ましい」

最後に笑みを見せて、自転車通学の孝太くんは校内の自転車置き場へ向かった。
そして空ちゃんの病院とは真逆方の、自分の家の方角へ走り出す孝太くん。

・・・・・・・。

どうしてこうなっちゃうの?

一方で、生徒玄関に一人残された私。

今の孝太くんの言葉を思い出しながら、私は独り言を呟く。

現状に対しての本音を一人呟く・・・・・。

「嘘の付けない真っ直ぐな人間か・・・・。それで人生得したことは一度もないのに、みんな何を言っているんだろ」

・・・・・・・。

一人では空ちゃんの顔は見れない。

そんなぶざけた事を一瞬考えてしまったから、私は一人で家に向かって歩きながら、昨夜の出来事を振り返っていた。

昨夜、北條がいきなり私の前に現れたときのこと・・・・・。