「まあね。本音を言うと、悪気しかなかった。『こんなことして、何になるんだろ』って、ずっと思っていた。『誰かをいじめることで、誰が得するの?』ってずっと考えていたよ。大好きな友達なら、なおさらね」

孝太くんは更に問い掛ける。

「じゃあなんで空に酷いことをしたんだよ?お前ら、言っていることと行動が滅茶苦茶だぞ。本音は何に悪いとは思ってないんだろ?」

「そう言われるとちょっとキツいな。まあでも、それについては言えないかも。空をいじめた理由は、かのんからは話せない」

「は?」

この場に及んで、私は『隠すことがあるのか?』と思った。
小坂も何故だか北條の姿を気にしている。
そして『話は終わり』と言うように、小坂は北條の背中を押して生徒玄関を出る。

まるで逃げるような小坂の背中。

「さあ、早く行こ!そらちゃんの元へ行こ!」

生徒玄関の扉は常に開きっぱなしだから、さっきから冬を感じさせる冷たい風が私達を襲ってくる。
だから早くここを出て小坂の言う通り、私も早く空ちゃんの元へ向かいたかったけど・・・・。

・・・・・・。

「なあ、悪いけどやっぱり帰ってくれ。空の気持ち考えたら、また空が辛くなる」

その孝太くんの言葉に、小坂の足が止まる。

少し悲しげな、先を歩く小坂の背中。

「こ、孝太くん・・・・」

私も『それは少し言い過ぎがな?』って思ったけど・・・・。

小坂は孝太くんの言葉を受け入れる。
「わかった。じゃあ燐、カラオケ行こうか?」

「えっ?」

「え?じゃない。お邪魔虫は帰りまーす!バイバーイ」

いつもの笑顔を見せて、戸惑う北條を連れて歩き出す小坂の姿。

次第に二人の姿は校門を潜り消えていく。
現状を全く理解できない北條は、何度も私達の姿を振り返っている・・・・。

・・・・・・・。

本当にこれでよかったのかな?

こんなことを言って二人を傷付けていいのかな?

・・・・・。

もう考えたくないかも・・・・。