「と言うよりさ、そらちゃんとかのん達の今の関係ってさ、話し合えば『こんな事』にはならなかったと思うんだよね。本当は空、『暴行されていたのが北條燐と小坂花音って知らなかった』だけなのかもしれないのに。だったら、それを花音達から本人の口から聞けば良かったのに」

小坂はずっと私達から視線を逸らしている北條の姿を一度確認すると続ける・・・・。

「あるよねー。そういう簡単で、一言を言えば解決すること。お互いの嫌なことを言わずに心に溜めてしまって、気がついた頃には自分の心は黒く染まってしまったってやつ?」

イマイチ本心の掴めない小坂の言葉。
自分が過去に犯した出来事を申し訳ないと思っているのか、他人事のように思っているのか、今の私にはイマイチ分からない。

分からないからこそ小坂に問い掛ける。

「何が言いたいのさ」

私の言葉の直後、突然小坂は私に笑みを見せた。

本当に、『さっきから何を言っているんだろう?』と思わされる小坂の言葉。

「うみちゃんは素直だから羨ましいよ。アンタ、嘘付けない人間でしょ?公園で猫をいじめる奴等が許せなくて、一人で助けに行った川下海さん。しっかり自分の気持ちを相手に伝えられもんね」

「えっ?」

空ちゃんに助けてもらった日の出来事、孝太くんしか知らないはずなのに・・・・・。

だから、『なんで小坂がその事を知っているの?』って疑問に感じたが、小坂はまた難しい言葉を並べてくる・・・・。

「全員がうみちゃんみたいに『嫌なことは嫌と言える人間』だったらいいけど、そうじゃない。空はその一人だから、今回のことのようになってしまった。かつて信じていた友達にいじめられて、大切な家族が次々にいなくなるなんて、想像しただけで吐き気が出てくるよ。かのんも今頃自殺しているかも。まあ、全部花音達が悪いんだけど・・・・」

・・・・・。

まあ、確かに耐えられないよね。
空ちゃんのこの数ヵ月の人生を経験したら、誰だって酷く心を痛めるし。

何より本当に死にたくなる人生だよね。
メンタルが強いと思う私だって耐えられないよ・・・・。

そんな中、孝太くんは私も北條と小坂に思っていた疑問を問い掛ける。

「お前らにも『悪い』と思う自覚はあったんだな」

小坂は小さく笑って答える。