「りーんちゃーん。帰ろ」

放課後の教室に、明るい声が私の耳に届いた。
いつも異質な雰囲気を出している、空ちゃんの『元』友達の声。

名前は小坂花音(コサカ カノン)。

そしてその小坂の声に返事するのが、小坂の友達であり空ちゃんの『元』友達でもある女の子。

名前は北條燐(ホウジョウ リン)。

私が今対立している大嫌いな女。

「うん・・・」

そう小さな声で、北條は小坂に返事を返す。
今日一日、北條に元気がない。

そんな北條が気に入らない小坂は、細い目で北條を睨み付ける。

「またそんな顔して。何考えてるの?」

「うるさい。どっかいけ」

「はいはーい」

小坂はいい加減な返事を返して、この場から出ていくかの思ったが、何故だか私達と目が合う。

いつも北條に見せている笑顔を、私と孝太くんに見せる小坂・・。

「おっと、ちょうどいいところに仲良しカップル」

仲良しカップルという言葉が気に入らないが、私は小坂を睨み付ける。

「何?」

と言うか私、北條も嫌いだけど、小坂のことも嫌いだ。
こいつ、いつも馴れ馴れしいし。

一方で小坂は無邪気に私達に微笑む。

「今からそらちゃんの所に行くんでしょ?だったら燐も一緒に連れてって」

北條を空ちゃんの元に連れていく?
小坂はまた何か企んでいるのだろうか?

・・・・・・。

まあでも、仕方ないか。

『北條も空ちゃんの事が大事』ってこの前知ったし。

「・・・わかった」

北條と一緒に行動するのは嫌だけど、私は小さく頷いた。
空ちゃんをいじめる北條は大嫌いだけど、ここは仕方ない。

でも北條は私達の存在を嫌がる。

「コイツらとは行かない。花音、勝手なことしないで」

小坂は呆れた顔で答える。

「この際二人とも仲直りしたらいいのに」

「うるさい!」

そう言って、荷物を持って逃げるように教室を出ていく北條。

どうやら私が北條の存在を嫌うように、北條も私の存在が嫌いみたいた。
私と一緒に行動するのはお断りらしい。

まあでも、喧嘩もした関係だし当たり前か。
今じゃ『いじめる側』と『いじめられる側』の関係だし。

「行っちゃった。相変わらずめんどくさい子」

小坂はそう呟くと、小さなため息を吐いた。
その姿はまるで『意地っ張りな空ちゃんを見守る誠也さん』みたいと私は思った。

何度か私もこの光景を見たことある。

ってそんなことより、今はそんなことより早く空ちゃんの元へ向かわないと。

私は鞄を持って席から立ち上がる。

「行こ、孝太くん」

「お、おう」

そして少し驚いた表情の孝太くんの腕を掴んで、小坂と言う存在からから逃げようとする私。

と言うか、早く小坂から離れたいのが今の私の本音。
今のコイツはただただ不気味で怖い・・・・・。

だけど、まるで『逃がさないよ』と言うように、小坂は笑顔で私達に問い掛ける。

小坂の無邪気な笑顔は、本当に怖い・・・。