通学路を歩く他の生徒達の中に混じって、自転車を押す孝太くんと一緒に歩く私。
お互い無言で歩く私達。

そんな私達をすっかり肌寒くなった朝のひんやりとした風が襲う。
マフラーとか手袋が嫌いな私にはちょっと辛い季節だ。

今日は十二月一日と、気が付いたら十一月は終わっているし。

と言うより私、冬自体好きじゃないかも。
昔からよく体調を壊すし。

何より寒いのは好きじゃない。

・・・・・・。

だからこそ、『ここで孝太くんは冬は好き?』なんて会話を持ち出しても良かったと思う。
気を紛らわせてもいいと思う。

でも上手く言葉が出てこない私には、その一言すら言えなかった。
大して面白くない話題でも、今は何か話さなきゃいけないと思うのに・・・・・。

・・・・・・。

代わりに聞こえるのは孝太くんの意味のわからない呟き。

「がんばれ」

「えっ?」

私の聞き間違えか、孝太くんの独り言かと思った。
一応孝太くんの表情を確認するけど、孝太くんは前を向いたまま。

でも孝太くんは、私に話しかけているのか、独り言かわからない言葉をさらに呟く。

ちょっぴり難しい孝太くんの言葉。

「がんばれって、本当に適当で無責任な言葉だよな。言われたソイツは常に頑張っているのに、『なんで顔も身元も知らない奴にそんなことを言われなきゃいけねぇんだ』って俺は思う。毎日死にたいと思う奴に『がんばれ』とか、頭おかしいだろ?」

「えっと、孝太くん?」

私がそう名前を呼ぶと、初めて孝太くんはこちらを振り向いた。

そして『悔しさ』と『笑顔』をごちゃ混ぜにした表情を、私に見せて更に続ける。

「結局、俺達も『適当で無責任な奴等の仲間だったんだな』って感じたよ。最後の最後まで、空の気持ちを理解してあげられなかった。空の考えていることを自分の都合のいいように捉えて、俺達は結局アイツの本当の意思から逃げていただけなんだ。本当に馬鹿だよな、俺達は」

本当に馬鹿だよな・・・・・・。

・・・・・。

確かにそうだね。