「痛っ!」

「痛って!」

口を揃えて二人は同じ言葉を思わず呟いた。
想像していなかった突然の『痛み』に、顔をしかめる海ちゃんと孝太くんの二人。

そして、あまりに痛さに私の手を離す海ちゃんと孝太くんの手。
青ざめていく二人の表情。

手を離された私は、当然のように急落下する。
段々離れていく海ちゃんと孝太くんの姿を見て、私は小さく笑う・・・・。

『ごめんね。そして、ありがとう』って心の中で呟きながら・・・。

・・・・・・。

二人が手を離した理由。

それは、私が『手を離すような痛い思い』をさせたから。
なかなか捨てられずに持っていたたこ焼きの爪楊枝で、二人の私を支える手を刺したから。

『いきなり訳のわからない痛みが手を襲ったら、二人の力が弱まる』と思ったから。

『私の手を離してくれる』と思ったから。

それで、結果がこれ。
私の思惑通り、二人は手を離してくれた。

重力によって、支えてくれた二人と距離が開いていく私。

死が急に近づく。

・・・・・。

でも参ったな。

飛び降りた地面がコンクリートだったら良かったけど、運悪く私が飛び降りた先は深い川の中。

と言うかこの廃ビルの近くに川が流れているなんて知らなかったし。
ビルの屋上からじゃ、暗くて川なんて見えなかったし。

まあ、どっちにしても死ねるからいっか。
曖昧な知識だけど、高い場所から水面に飛び降りて死んだ人もいるくらいだし。

多分私も死ねるよね。

と言うか、もう何も考えないでいようかな。

確実に途中で意識は途絶えるのだし。

あと数秒の我慢だし・・・・・・。

・・・・・・。

・・・・・あれ?

そういえばここ、お父さんがハムスターのぬいぐるみを探してくれた川だったような。

私にとって『思い出の川』だったような・・・・・。

・・・・・・。

まあ、そんなのどうでもいいっか。

もう何もかも手遅れ何だし。

今さら『死にたくない』と後悔しても遅いし。

もう涙を流しても、何の意味もないし・・・・・・。

・・・・・・・・。