「おうおうおう!女の子をいじめてそんなに楽しいか?お前らは」

公園の外から聞こえた男性の声。
持ち主の姿は暗くてよく分からない。

そんな声に対して、女の子を蹴っていた男がその声の持ち主の元へ向かう。
怖い顔で声の持ち主を威嚇する。

「なんだこのクソじじい!」

そう言って男は声の持ち主に拳を作って襲い掛かる。
ボクサーのような鋭いパンチ。

が、残念ながら返り討ち。

男は綺麗に投げられて、宙を一回転。
背中を地面に勢いよく叩き付けられる。

「うわっ!」

そういえばお父さん、大学時代に柔道の全国大会で優勝したんだっけ。
時々近くの中学校の柔道部に指導に行っているんだっけ。

「クソじじいにやられるテメーらは一体なんなんだ?」

笑いながらそう男達に言葉を掛ける男の人は、私のお父さんだった。
私達を助けようとしてくれた先程の声の持ち主で、細身の体型だけどお父さんの腕力はスゴい。

あとお父さん、恐ろしく怖い。
私の髪を引っ張る男を狼みたいな顔付きで睨んでいる。

「お前らもコイツと同じ目に遭いたいか?喧嘩してもいいけど、五体満足で帰れると思うなよ。娘をこんな目に遭わせてくれたのだからよ」

「うるせークソジジイ!やってやんよ!」

私の髪を引っ張る男は手を離すと、お父さんの元へ向かう。
それともう一人の男も同時に走り出すと、お父さんの不気味な笑顔を目掛けて殴りに掛かる。

けど・・・・。

一分後。
三人の男達は砂まみれの服装のまま、私達やお父さんに向かって土下座していた。

さっきまでライオンのように恐かった三人は、お父さんのおかげで『借りてきた猫』のように大人しい。

「す、すいませんでした!」

一方のお父さんはさっきの殺意のこもった表情ではなく、私や武瑠に見せる満面の笑顔を男達に見せていた。
まるで『言う事を聞かない可愛いクソガキ達だな』とでも言うように。

「おう!分かればいいんだ。もう悪いことすんなよ?次やったらマジで命はねえかもしれねぇし」

最後のお父さんの言葉に、男達と私は身震い。
規律を乱す者や約束を破る者には凄く厳しいお父さんだから、本当に実行しそうだと私は感じたから。

そして男達は逃げていく。
何だかカッコ悪い背中だ。

こうして静かになった公園内。
お父さんは一息吐くと、私に視線を移す。

「さてと・・・・・」 

・・・・・・・。