『この屋上から見える花火はとても綺麗だな』って思いながら、私は誰もいない屋上を歩いていく。
特に何も目立ったものがない廃ビルの屋上。

そしてその廃ビルの屋上で、私は静かに屋上からの転落を防ぐために設置された柵を乗り越えた。

そこから見下ろせば十階くらいの高さから見下ろす景色が広がっていて、今日は祭りだから、街を歩く人や赤く光る車の光がよく見えたりもする。

高所恐怖症の私にはかなり辛い光景。

・・・・・・。

でもさ、本音を言うと不思議と今は怖くないんだ。

『今日で美柳空の人生は終わりだ』って最初に決めていたから、十階くらいの高さも不思議と怖くない。

『今から私は死ぬんだ』って自分に言い聞かせたら、全然怖くないし。
それにあと一歩前に踏み出したら、確実に落ちる。

と言うより『早く飛び降りたいな』って気持ちが大きい。
私も早く家族の元に行きたいし。

もしかしたらみんな私の存在を待っているかもしれないし。

・・・・・。
うん、だったら私も早く飛び降りて死のう。

正直言ってもう耐えられないし。

・・・・・・・・・。

やっぱり私は最後は自分に負けてしまう。
どれだけ『頑張ろう』と思っても、どれだけ周りが励まそうとしてくれても、本当の私はずっと殻に閉じ籠ったまま。

絶望に飲み込まれ続ける私は何一つ変われない。

弟の武瑠が亡くなってから芽生えた『私も死にたい』と言う気持ちは全然消えないし、むしろその気持ちは大きくなっていく一方。

我慢の限界はとっくの前に越えている。