目の前の秋の夜空には、季節外れの花火が無数に散っていた。
様々な形をしたり、連続で撃ち上がったり、とても大きな花火が撃ち上がったり。

その花火を見ていたら後ろから声が聞こえてきた。
海ちゃんの不満げな声と、その不満げな声に対して苛立ちを覚える孝太くんの声。

「もう!あのおっちゃんホントムカつく。孝太くん以上にムカつく!」

「まだ言ってるのか?ってかテメェ喧嘩売ってんのか?」

その声に振り替えると、両手いっぱいに屋台で買ったたこ焼きや焼きそばを持つ海ちゃんと孝太くんの姿があった。

何かお互いに不満があるのか分からないけど、本当に仲のいい二人だ。

「あっ!そんなところに居たのですか?危うくこのクソゴリラと一緒に花火を見るところでした!」

そう言って海ちゃんは自分達の存在を知らせてくれた。
連絡してないのに、人混みの中から私達の存在を見つけるなんてすごいかも。

一方で海ちゃんの言葉に相変わらず不満を抱える孝太くん。

「海、お前・・・、ホント最近口悪いよな」

「誰のせい?」

「自分のせい」

このまま二人を放っておいたら喧嘩が始まるだろう。
屋台の人と何かトラブルがあったのか、今にも怒りを爆発させそうな海ちゃんの怒りの表情。

でも今日は真奈美さんがいる。
誠也さんと同じで、私以外との争い事を好まない真奈美さんは、笑顔で二人をいじる。

「はいはーい。夫婦喧嘩は家でしてね。そんなことより何か買ってくれた?」

「夫婦喧嘩って・・・・。私とこのクソゴリラは別に」

「何か買ってくれたの?」

再度『その夫婦喧嘩には興味がない』と言うように、海ちゃんの言葉を上書きして、再び笑顔で問い掛ける真奈美さん。

なんか真奈美さん、怖いよ・・・・。
海ちゃんもちょっと驚いているし・・・・・。

「あっ、はい!焼きそばにたこ焼きにカステラにクレープ!」

「ありがとう!これで花火がもっと楽しめる!お金は後で払うねー」

真奈美さんは海ちゃんから焼きそばを受けると、すぐに視線を花火に戻した。

海ちゃんと孝太くんも私達同様に腰掛ける。

そしてみんなで海ちゃんと孝太くんが買ってきた屋台の料理を食べながらみんなで花火を見た。
楽しく会話を交わしながら四人で同じ光景を見つめる。

「そういえばみんな、来月のクリスマスは暇?」

花火の音に紛れて聞こえた真奈美さんの言葉。孝太くんは答える。

「暇と言えば暇ですけど、何かあるんですか?」

「いやー、クリスマスは超忙しいからアルバイトに来ないかなって。ぶっ倒れるほど忙しいから」

「バイトの誘いですか?まあ別に俺は良いっすけど。特にクリスマスは何も予定ないし。彼氏のいない姉ちゃんらとダラダラ過ごすだけだし」

孝太くんの言葉の直後、真奈美さんの目の色が変わった。
とても嬉しそうな表情。

「まじ?スッゴい助かるかも!海ちゃんは?」

「私は・・・・と、特に何も」

曖昧な反応の海ちゃんに、性格の悪い真奈美さんはすぐに察する。