「やめてください!」

無意識だった。
いつの間にか公園の中に足を運んだ私は、そう叫んでいた。

自分の存在を男達に知らせるように。

そして震えた声で私は続ける。

「その、女の子に暴力なんて、絶対にダメだし。その・・・・」

目の前の男達が怖すぎて、自分が何を言っているのか自分でも理解出来ない。
言いたい事はあるのに、目の前の男達が怖すぎて上手く伝えられない。

相変わらず情けないな私。
助けるなら堂々としないとナメられるだけなのに。

例えば、こんな風に・・・・。

「お前、コイツの仲間か?」

突然私の髪を引っ張る男。
そして左右に頭を揺らされる。

私も思わず悲鳴を上げてしまう。

「ひゃっ!痛い!」

「生意気だな、お前も。気に入らねぇぞ」

私の髪を引っ張る男は怖い顔で私を睨んでいた。
『逃がすかよ』とでも言うような、ただただ怖い顔。

そしてこれから『私も殴られる』と言うことは痛いほど理解した。

と言うか、こうなることは理解していたのに、どうしてこんなことに首を突っ込んでいるんだろ。
どうして勝てない土俵に上がるんだろう。

私、勝てないから逃げようとしたはずなのに。

なんで?

・・・・・・。

やっぱり、北條さんと小坂さんを見捨てたあの一件があったから?
ここで逃げたら、今度は目の前で倒れている女の子にいじめられると恐怖を抱いたから?

まあでも、今はそんなことどうでもいいか。

とにかく今は目の前の出来事に集中だ。
私の髪を引っ張る男をどうにかしないと。

でも『どうにかしないと』ってどうやって?
私、喧嘩なんてしたことないのに。

力も無いのに。

「とりあえず歯を食いしばれ。お前気に入らねぇから、一発殴ってやるよ」

「い、いや!」

涙を浮かべながら、私の髪を掴む男の手に私は抵抗する。
結局『助けて』って馬鹿みたいに誰かに祈る私。

・・・・・・・。

だけど直後、近くから聞き覚えのある声が聞こえた。
何度も聞いた、私の大好きな声。

同時に私は身震いする・・・・・。