「まあ、焦らずに行こうぜ。ちょっとずつでいいから前を向いて歩いていれば、なんとかなるだろうしよ。うまく言えねえけど」

前を向いてか。
いつも前向きな海ちゃんや孝太くんがちょっぴり羨ましい。

・・・・・・。

一つ孝太くんに聞いてみよう。
「海ちゃん、学校ではどんな感じなの？」

「なんでそんなことを気にするんだ？」

「いや、だって」

『私はしばらく学校に行ってないから、まだ私のせいでいじめられているの？』って聞きたかったけど、思うように言葉が出てこなかった。

海ちゃんと北條さんの関係を思い出すと、どうしても胸が苦しくなるし。

私のせいで、二人の関係が最悪になってしまったんだし・・・・・・。

だけどその私の思考を覗いていたのか、孝太くんは私の疑問に答えてくれた。

祭りで楽しい表情を殺し、真剣な表情で答える孝太くん。

「正直言って、お前の知っている状況と何一つ変わってねぇよ。海のやつ、今もずっと北條と対立してる。だから酷いいじめを今も受けているよ」

「そう、なんだ」

「また自分のせいだと思っているんだろ？」

「うん・・・・痛っ！」

孝太くんに頭を叩かれた。
まあ軽くだけど。
そしてその孝太くんに慌てて振り返ってみると、優しい孝太くんの表情があった。
いつも私を励ましてくれるときの優しい孝太くんの表情。

それと暴言。

「アホか」

「えっ？アホ？」

自身が言った『アホ』と言う言葉を無視して、孝太くんは答える。

「海はただ北條の行動が許せないだけ。友達であるお前の悪口を言うから、北條のことを許せないだけだよ。空のことを『友達』と思うなら、当たり前の行動だろ？」

・・・・・。

そうだけど・・・・。

「確かにそうかもしれないけど・・・・。でも私が悪口を言われるような人間だから悪いって言うか。そもそも私が巻いた種って言うか・・・・痛い」

また頭を叩かれた。
まるで『それ以上お前の言い分けなんて聞きたくない』と言っているみたい。

孝太くんは答える・・・・・。

「お前が巻いた種じゃない。俺達みんなで巻いた種だ。お前のいじめを見てみぬフリをした、俺達のクラスメイト全員のな」

孝太くんは続ける。
真剣な表情で私の目を見ている。

でも少し手は震えている・・・・・。