と、とりあえず、誰か呼ばないと。
じゃないと女の子が危ないし、もしかしたら怪我しているかもしれないし。

まずは警察だ。
警察に電話したことないけど、『女の子が暴行受けている』って言ったら、警察も来てくれるよね。

だったら早く携帯電話を取り出さないと。
確か鞄の中に閉まってあったはず。

絶対にあるはず・・・・・なのに。

・・・・・・。

どれだけ自分の鞄の中を漁っても、携帯電話が見つからなかった。
制服のポケットにもないし、スカートのポケットの中にもない。

ワイシャツの胸ポケットにもないし、どこを探しても携帯電話は見つからない。

もしかして私、武瑠の病室に置いてきちゃったかな?
武瑠と一緒に携帯電話で写真を撮って遊んでいたし。

だから私の携帯電話、武瑠の病室に忘れてきてしまったかも。
私の携帯は武瑠が持っているのかも・・・・・。

だとしたら、最悪だ。
これじゃあ連絡出来ないし、交番も近くにはない。

さっきから誰一人とこの辺りを歩いていないし、誰も助けを呼べない。

そしてこうして私が戸惑っている間も、女の子は暴行受けている。

小さな声で悲鳴を上げている。『助けて』って聞こえる。

・・・・・・。

でも、仕方ないよね。
私じゃ何にも出来ないし。

助けることなんて私には出来ないし。

向こうは喧嘩の強そうな男が三人で、私なんて喧嘩なんてしたことない普通の気の弱い女子高校生なんだし。

真っ正面から行っても勝てるわけないんだし。
女の子と同じ運命になるだけだし。

ってかよくよく考えたら、この前のトンネル内の出来事も、私が助けに行ってもなんにも意味ないし。

私も同じように痛い思いをするだけなのに・・・・。

・・・・・。

だったら、また逃げてもいいよね。
北條さんと小坂さんに嫌われたように、逃げてもいいよね?

だって私、もう人として最低な人間なんだし。
友達を見捨てるような最悪な奴だし。

と言うかそもそも今回の女の子、全く知らない子だし。

何より私には関係ないし。

今度こそ関係ないし・・・・。 

・・・・・・・。

そう、関係ないのに・・・・・・。