お父さんにも『今の現状』については何も話していない。
私がいじめられている事を、お父さんは知らない。

だからお父さん、今でも北條さんと小坂さんとは仲良くやっていると思っている。
『最近あのヤンキー娘と遊んでいないのか?』なんて聞いてるし。

『今日も二人と一緒に楽しく遊んできた』のだと思っているだろう。
北條さんと小坂さんの話題になると、お父さんすっごく嬉しそうな表情を見せるし。

いつもひとりぼっちの娘に友達が出来たら、お父さんだって嬉しいと思っているし。

でも武瑠にバレたんだ。
黙っていても、時間の問題。

いずれお父さんにもバレる。
その二人にいじめられていることもバレるだろう。

・・・・・・・・。

だけど、お父さんだけには言いたくない。
いつも仕事で疲れているし、お父さんには心配させたくないし。

何よりあまり他の人を巻き込みたくない。
なんていうか、今回は私が犯した罪のようなものだから、私から『助けて』なんてあまり言いたくないし。

と言うかいじめられて当然ていうか。ある意味これは私への罰なんだし・・・・・。

そんな事を考えていたら、突然近くから荒々しい男の声が聞こえてきた。
怖い威圧感を感じる男の声。

「おいこら!逃げんじゃねぇよ!」

男は私に言っているのかと一瞬だけ不安になったけど、どうやら違うみたいだ。
周囲を見渡しても男の姿はない。

だけど周囲を見渡していたら、私は近くに小さな公園を見つけた。
さっきの威勢のいい声は、恐らくこの公園の中にいるのだろう。

公園の中に誰かがいるのが見えた。

私はその公園の状況を知るために、公園の中を覗いてみた。
公園を照らす外灯があるから、公園内は夜なのに結構明るい。

そしてそこには私と同じ学校の制服を来た私の知らない女の子が、大きな体格の男三人に襲われていた。
髪を引っ張られ殴られたり蹴られたり、一方的に攻撃を受け続ける女の子。

痛々しい彼女の姿に、私は思わず目をそらしてしまう。

そして、力なき小さな女の子の悲鳴・・・・・。

「や、やめてください・・・・」

一方で暴行する男の一人は、女の子を睨み付ける。

「んだ?そんなことを言われても、お前が喧嘩売ってきたんだろ?俺達、ただこの公園で楽しく遊んでいたのによ」

そう言った男は、女の子の腹を蹴った。
女の子はその場でぐったりして、倒れ込んでしまう。

その後もすぐに他の男に蹴られたりして、とても苦しそうな表情を見せている女の子。
抵抗する力すらないのか、一方的にやられるだけ・・・・。

そんな女の子を見て、なぜだかふと夏休み終わりのトンネル内の出来事が私の脳裏に蘇る。

脳内で、暴行を受けていた北條さんと小坂さんの悲鳴がこだまする。

・・・・・。