「そーらちゃーん!お兄が目を覚ましたから一緒に殴りにいこ!」
自分の部屋で引きこもる私の元に現れた、笑顔の真奈美さん。
自身が大好きな『お兄』という言葉を使って、いつもの笑顔で私を笑わせようとしてくれるけど・・・・・・。

私は相変わらず。

「行きたくないです」

私の声に、真奈美さんは呆れたように大きなため息を一つ吐いた。

「またそんな意地張って。空ちゃんの大好きな誠也お兄ちゃんだよ!空ちゃんの天敵の誠也さんだよ」

二週間も出しっぱなしの布団の上にいる私に抱き付く真奈美さん。
その姿はまるで、殻に閉じ籠る私を引きずり出そうとしているみたい。

でもそんな過激な真奈美さんの姿を見て、おばあちゃんの声が聞こえる。

「こら、真奈美。やめなさい」

真奈美さんは頬を膨らませて言い訳する。

「だって空ちゃんが言うこと聞かないんだもん。『いつまでも引きこもって何になるのさ?』って私は伝えたい」

「ったく」

真奈美さんの言葉と同意見だったからか、おばあちゃんは小さな息を吐いて、それ以上は何も言わなかった。
『流石にこんな残念な孫は見てられない』とでも言いそうな、おばあちゃんの優しい表情。

一方の真奈美さんは軽々と私を部屋から引きずり出す。
誠也さん同様に力があるみたいだ。

「ってな訳で、キヨさん。空ちゃんをお借りしますね」

「ああ。好きにせい」

おばあちゃんの言葉に疑問に思った私だが、強引に真奈美さんに体を持ち上げられる。
その私の姿はまるで家の中で怠ける猫みたい。

「よーし!まずはお風呂だ!とりあえず空ちゃん、服を脱げ!」

そう言って強引に私のパジャマを剥ぎ取ろうする真奈美さん。
まだ私の部屋を出たばかりで、お風呂場にはほど遠いのに。
「ちょ、真奈美さん」

「空ちゃん臭いよ。ちゃんとお風呂に入ってる?」

『実は私、日にちは言えないけど全然お風呂に入ってません』なんて言えるわけがないから、私は適当に否定する。

「関係ないです」

「また意地張って。とりあえずおいで」

「嫌です」

私がどれだけ抵抗したり暴れてみても、何故だか真奈美さんには通用しない。