全長百メートルもない小さな橋は、今朝私が通った今日の通学路。

間違いない。

その橋の下には綺麗な水が流れる川が流れていた。
結構深い川。

その橋を指差すお父さんは、私に問い掛ける。

「この橋とか探したか?」

「ううん」

「そっか。よし、じゃあ一緒にちょっと探してみるか」

お父さんは私をおんぶしたまま、先程同様に懐中電灯の光を頼りに周囲を見渡していた。
器用に私が落ちないように片手で支えながら、草むらや橋の近くを探すお父さん。

何だか今のお父さん、腕がいっぱいあるように見える。

そんなお父さんに疑問が浮かべる私は、恐る恐る聞いてみる。

ずっと心に引っ掛かる事を、小さな声で問い掛ける。

「お父さん、そらに怒らないの?」

私の声にもお父さんは手を止めず、逆に優しい声で私に問い掛ける。

「なんでそんなことを思うんだ?」

なんでそんなこと?

そんなの決まってるじゃん・・・・。

「だってそら、悪いことしているから」

「悪いことってどんなことだ?」

悪いこと。
それを口にするのは抵抗があったけど、嘘の付き方を知らない小学一年生の私は素直に答える。

「勝手に家を出たこと。お母さん、ぜったい怒ってる」

「そうか」

そう短く呟いたお父さん。
相変わらずお父さんは子供みたいに目を輝かせ、全く怒ってない。

そんなお父さんはおんぶをしている私を、今度は肩に乗せてくれた。
お父さんは背が高いから、何だか凄く視野が高い。

そして私に説教をしてくれた。

お父さんらしい優しい声で、私を包んでくれる。