お父さんの帰りを、ただ無言で待つ私。

気が付けば時間は更に過ぎて、時刻は午前三時を回っていた。
病院に着いたのは十二時くらいだから、気が付けば三時間も経過している。

不思議と全然眠くない。

だけど三時間も経過しても、手術中の赤い光は消えなかった。
手術室の部屋からは何も変わらない不気味な雰囲気が伝わってくる。

そして暫くしたら、おばあちゃんが到着した。
仕事着のまま、息を切らして病院に辿り着くおばあちゃん。

「まだか」

そう言って『手術中』の文字を確認したおばあちゃんは、私の隣に座ると息を吐く。

「ふうー。この年になると山登りはキツいなあ。まさか届け先が山の中の家だとは思わんだ」

私に語り掛けるようなおばあちゃんの独り言。
家族が一命を争うのに、お寿司を十人前を再び作って、一人で届けた超人のようなおばあちゃん。

とても七十代の行動じゃない。

そんな超人的なおばあちゃんは、私の為に自動販売機で買ったと思われるペットボトルを差し出す。

ひんやりとした冷たいものが、私の手に当たる。

「ほれ、空。これでも飲め」

多分おばあちゃん、現状に絶望する私を励まそうとしてくれているのだろう。
ペットボトルの中身は私の大好きなリンゴジュースだ。

幼いときからよく飲んでいたリンゴジュース。

だけど落ち込む私は、今のおばあちゃんの気持ちすら理解出来ない。
受け取らずに、おばあちゃんにリンゴジュースを返す私。

「いらない」

おばあちゃんは笑う。

「空は強がっているのか?相変わらず意地っ張りな孫じゃな」

おばあちゃんの言葉の直後、リンゴジュースのペットボトルが今度は私の頬に当たった。
ひんやりした冷たいものが私の頬を襲う。

だから私、変な声を出して驚いてしまった。
静かな病院内に、私の声が響き渡る。

「ひゃ!」

おばあちゃんはまた笑ってくれる。

「黙って飲みなさい。誠也やお父さんが目を覚ましたときに、空が倒れていたらどうする?痩せ我慢も大概にしなさい」

おばあちゃんは私の頬に当てたリンゴジュースのペットボトルを、無理矢理私に握らせた。

そしておばあちゃんは、何度も私に笑顔を見せてくる。

「なーに。あの二人のことじゃから必ず帰ってくるじゃろ。手術が終わった頃には誠也も将大も笑っとる。だからお前も笑っとけ」

笑っとけ。
その言葉を聞いて私は一つ疑問が浮かび上がる。

どうしても、今の私には理解できないことがある。