また突然電話が鳴り響いた。

お店の固定電話ではなく、私の携帯電話でもない。
真奈美さん携帯電話。

真奈美さんは相手を確認することなく、自分の携帯電話を耳を当てる。

「はーい、田中です。はい。はい」

『なんだが電話がよく鳴るな』と思いながら自分の席に戻った私は、グラスのお茶を一口。

と言うか、みんなの分のお茶をいれてきた方が良かったかな?
お父さん達、まだ帰ってきそうにないみたいだし。

そんな呑気な事を考えていたら、いつの間にか電話の子機を耳から外し、肩を落とすおばあちゃんに呼ばれた。
何故だか真剣な眼差しを見せて、私に指示を出すおばあちゃん。

「すまん、空。ちょっと誠也に連絡入れてくれんか?将大のやつ、電話に出ないらしい」

将大(マサヒロ)。
お父さんだとすぐに解釈した私は、ポケットから携帯電話を取り出す。

「あっ、うん。何かあったのかな?」

「さあな。詳しいことは・・・・・」

「は?どいうことですか?」

おばあちゃんの声を書き消すような、大きな声の持ち主は真奈美さんだった。

恐ろしいほど不安な表情を見せて、携帯電話で誰かと話している。

「いや、嘘ですよね?流石に。絶対に嘘ですよね!?」

「・・・・真奈美さん?」

私は思わず真奈美さんの名前を口にした。
そして真奈美さんの真っ青な今の表情に、ただただ驚く私。

でも真奈美さんも気になるけど、その前にやらなくちゃならないことがある。
おばあちゃんに頼まれたことを実行しないと。

ってかお父さんどうしたんだろう。
真奈美さんも様子がおかしいし。

誠也さんも、大丈夫なんだろうか。

「と、とりあえず私、誠也さんに電話してみる」

いつの間にか周りの空気に呑み込まれた私は、不安な気持ちに包み込まれながら誠也さんに電話を掛ける。

何が何だか分からないまま、携帯電話を耳に当てる。

・・・・・・・・・。

だけどすぐに真奈美さんに止められた。

暗く絶望に染まった真奈美さんの声が、隣から聞こえる。

「いい。空ちゃん。お兄出れない」

「えっ?」

出れない?

『出ない』じゃなくて『出れない』?

私はさらにその言葉の意味を考えようとしたが、真奈美さんは真っ青な顔で今の自分自身の携帯電話のやり取りを説明してくれる。

武瑠と海ちゃんの件で心を痛める私には、とても耐えきれない真奈美さんの言葉・・・・・・。