「アイツも元気にやってんだな」

突然聞こえて来たその声の持ち主を振り返ると、お父さんの姿があった。
腕を組んで、私達同様にタブレットを眺めるお父さん。

そんなお父さんに、真奈美さんは笑顔を見せる。

「あっ、将大さんお邪魔してまーす!」

「おう真奈美、いらっしゃい!」

お父さんは真奈美さんから私に視線を変えると続ける。

「空、飯は旨かったか?」

美味しかった。
気がつけば晩御飯を完食しているから、私は素直な気持ちを伝える。

「う、うん。美味しかったよ」

「やっぱり暖かい飯の方が旨いだろ?」

思わず頷きそうになったが、私はグッとこらえて否定する。

そこは素直になりたくない・・・。

「・・・うるさい」

素直になれない娘である私の頭を撫でるお父さん。
誠也さんと違って、髪がくしゃくしゃなるほど激しいお父さんの手。

と言うか頭を撫でてほしくない。
子供じゃないんだし。

撫でられるのは好きだけど、少し恥ずかしいし・・・・。

父さんは再び私に笑顔を見せると、真奈美さんに視線を戻す。

「真奈美、グラス空じゃねぇか。まだ飲むか?」

「じゃあレモンチューハイ、あっいや、柚子チューハイください!」

「はいよ。今日はよく飲むな」

「誰かと一緒に食べるご飯は格別で美味しいからね。お酒も進んじゃいますよ」

「だな」

お父さんは空の真奈美さんのグラスを持って出ていくと、新しいグラスに柚子チューハイを入れて帰ってきた。
そして再び忙しくなったのか、急いでキッチンに戻って行くお父さん。

私達がいる部屋の隣の個室からも呼び鈴が聞こえる。
ちょっと忙しそう。

一方の私は真奈美さんと会話を続けた。
他愛のない話で、また盛り上がる。

やっぱり人と会話するのは楽しいと、感じながら真奈美さんと会話を進めていく。