「チロルか。ちょっと調べてみようと」

そう呟いた真奈美さんは大きなあくびを一つ浮かべると鞄からタブレットを取り出して、早速チロルさんについて調べ始めた。
素早い手付きで検索していく真奈美さん。

「この人が空ちゃんが見たチロルって人？」

真奈美さんはタブレットに映る一人の女性を私に見せてくれた。
タブレットに写っているのは、明るい茶髪の細見の可愛らしい女性。

お母さんにそっくりな顔立ちの人だったから、その人で間違いない。

「あ、はい。その人が私の見た人です」

「へぇ、結構可愛い人だね」

真奈美さんは他にもその人が写った写真を調べていく。
躍り手という職業なのか、チロルさんの写真は踊っている部分を切り取った写真ばかり。

どの写真もチロルさんは満面の笑みを見せている。
本当に『私のお母さんにそっくり』だと、私は何度も思わされる。

そんなチロルさんについて調べる真奈美さんは、あることを思い出したみたいだ。
少し前の記憶を振り返る真奈美さん。

「・・・・あれ？この人この前お店に来ていたような」

「えっ？」

「お兄と空ちゃんが来てくれた日のことだよ。あの日、スッゴく綺麗な人来てたでしょ？」

「えっと」

それはきっと、誠也さんと一緒に真奈美さんのお店でお昼ご飯を食べに行った日のことだろう。

でも記憶力があまりない私は首をかしげる。
昔から人の顔や名前を覚えるのは苦手だし。

でもそんな人もいたような・・・・。

やっぱり覚えていない・・・・・。

「まあ知らなくて当然だよね」

曖昧な表情を見せていたら、真奈美さんはそう言ってチロルさんが踊る動画を私に見せてくれた。

チロルさんがタブレットの中で動き出し、公園と思われる緑の広場が広がる場所で音楽に合わせてさっき同様に華麗なダンスを見せてくれる。

右へ左へジャンプをしたりなど、私も不思議とチロルさんに集中してしまう。

なんだかかっこいいし、かわいい。

・・・・・。