「こら！空ちゃんをいじめたらダメでしょうが！」

「だって空ちゃんからかうと面白いし」

「まあそれなら仕方ないか。私も『空ちゃん相手ならからかってもいい』と私は思うし」

二人の会話を聞いて、『本当にどこまでも汚い田中兄妹なんだ』と思った。
肩も落とす・・・・。

そしてため息を一つ吐くと、小さく呟く・・・・。

「意味わかんないし、酷いです」

本当に性格の悪い誠也さんと真奈美さん。
まるで私を人だと思っていないような言葉で私をからかってくる。

・・・・・。

ばか。

そういえば私、今日は海ちゃんと孝太くんに同じように絡まれたっけ。
二対一で、今の性悪田中兄妹のようにからかわれたっけ。

何だか複雑な気分だ。
それと一方的にやられて、『悔しさ』が溜まっていく。

と言うか、私ってやっぱりからかわれやすいのかな？
最近悔しい思いをしてばっかり。

・・・・・・。

ばかやろう。

「でも楽しいことか。それひとつで空ちゃんも明るくなるかな？」

誠也さんのその言葉に私は耳を傾けたが、誠也さんはそれ以上は何も言わなかった。
どうやらただの独り言らしい。

でも代わりに真奈美さんの声が聞こえる。

「よし！んじゃあお互い何か一つやりたいことを決めよう。次会う時までにやりたいことを決めとくこと。空ちゃん携帯の番号教えて」

「え？あ、はい・・・・」

流れるように私は真奈美さんの言葉通り、制服のスカートのポケットから携帯電話を取り出す。
武瑠と私の自撮り写真が映った待ち受け画面の私の携帯電話。

その携帯電話の番号を真奈美さんに教えて、私も真奈美さん番号を登録。
そういえば今日海ちゃんと孝太くんとも連絡先を交換したんだっけ。

そんなことを思い出していたら、真奈美さんから恐ろしい言葉が聞こえてきた。
本当にお兄さん同様に真奈美さんも性格が腐っている・・・・・。

「よし！早速空ちゃんの番号をネットに晒しちゃお」

「真奈美さん！ダメです！」

真奈美さんは笑う。
私をばかにするだけの、意地悪な笑顔。

その笑顔は本当にお兄さんの誠也さんによく似ている・・・・。

「嘘に決まっているのに。本当に空ちゃんはかわいいのう」

「うぅ・・・・」

まるで猫をなだめるように私の頭や顎を撫でてくる真奈美さん。

・・・・ちょっぴりお酒臭い真奈美さん。

そんな真奈美さんと誠也さんのお陰で、私はまた少しだけ元気が出た。
暗かったはずの私からも、笑みが溢れ始める。

私も話題を振ってみる。