「空ちゃんは趣味とかないの?」

趣味については、この前も誠也さんに聞かれたっけ。
一度答えたから、今度はすんなり答えられる。

「本を読むのが好きです」

「へぇ!本か文学少女みたい」

「文学少女ってなんですか?」

「私は体を動かすのが好き!実はさっきまで草野球チームに参加していていたんだ。全部三振だったけど」

三振。
野球でよく聞く言葉だが、あまりいい意味ではないことは知っている。

と言うかあれ?
ちょっと話が噛み合ってない気がするのは気のせいかな?

マイペースな真奈美さんは続ける。

「あー、なんか楽しいことないかな?野球もちょっと飽きちゃったしな。釣りもいいけど、飽きちゃったし」

「お前は飽き性だからな。三日坊主の真奈美ってよく母さんから言われてたもんな」

そう言いながら、いつの間にかレモンチューハイとお寿司の盛り合わせが乗せられたお皿を持って現れる誠也さん。

と言うか誠也さん握るの早すぎ。
多分、師匠であるお父さんやおばあちゃんより握るスピードは早いし。

それにかなり丁寧だし。

そんな誠也さんの言葉に、何度か頷く真奈美さん。

「まあね。でもそれが私の特徴の一つだと思うからさ。飽き性の真奈美はやめないよ」

「相変わらずぶっとんだ妹だぜ」

誠也さんが真奈美さんの前にお寿司とレモンチューハイのグラスを置くと、真奈美さんの目が輝いた。
豪華で綺麗なお寿司の盛り合わせに真奈美さんは嬉しそう。

「わーい、いただきます!」

真奈美さんは手のひらを合わせると、早速注文したサーモンのお寿司を一口。
直後、真奈美さんから満面の笑みがこぼれる。

「美味し!やっぱりお兄が作る寿司は美味しいよね」

妹に褒められて嬉しいのか、誠也さんは笑みを見せる。

「当たり前だろ?空ちゃんのお父さんとおばあちゃんに教えてもらったからな」

そう言った誠也さんは、私の隣の席に座る。

そして誠也さんは今の自分の現状について話してれる。

「本当は『もうお前に教えることはない』って、将大さんに言われているんだ。『充分能力があるから、誠也はいつでも独立出来る』ってな」

「えっ?そうなの?やっぱり空ちゃんがいるから、まだ独立しないの?」

真奈美さんの問い掛けに、誠也さんは私を見て笑う。

「まあな。空ちゃんを見ると家のハムスターを思い出すって言うか。なんか放っておけないって言うか」

「あー、お兄の言っていることなんかわかるかも」

ハムスター?

絶対にいい意味じゃないよね?

そんなことを思っていたら誠也さんに肩を叩かれた。

同時に誠也さんは意味のわからないことを言ってくる・・・・。

「だからここを出るとは、空ちゃんも連れて出ようかなって。将大さんには嫁に貰っていいってオッケーもらっているし」

「うおー!それいいね!」

誠也さん、本当に何を言っているのだろうか?
目を輝かせる真奈美さんもどうかしている。

と言うか私、『誠也さんのお嫁さんになる』なんて一言も言ってないよ!

頭おかしいよこの人達・・・・・。

何より松井先生に殺される・・・・。