「これって私のせいですよね?私のせいで海ちゃんが嫌な思いをしているし。酷いことをされるようになってしまったし」

誠也さんの真剣な眼差しに逆に私が怯んでしまいそうだったけど、私は続ける。

「それに海ちゃん、すごく私に気を使ってくれるから。だからどんなに辛くても、自分がいじめられても、ずっと私には笑顔を見せてくれるから。励まそうとしてくれるから」

「それが辛いの?」

私は小さく頷いた。
それが本当にすごく辛い・・・・。

自分のことより、私のことを優先的に考えてくれるからこそが辛い。
私のことなんて放って置いて、自分の気持ちだけに向き合ってくれた方がいいのに・・・・。

一方の誠也さんは、私の頭を撫でてくれる。
どんなに私が辛くても誠也さんは変わらずに私を励ましてくれる。

「でも大丈夫だからさ。この前言っただろ?『家族の前だったら泣いてもいい』って。みんな空ちゃんを支えてくれるからさ。少なくとも、ここにいるみんなは空ちゃんの味方。どんな辛いことがあっても、決して空ちゃんからは離れないからさ」

「う、うん」

『空ちゃんからは離れないから』か・・・・・。
そう言われたら思わず涙が出たけど、私は慌てて拭き取る。

誠也さんは続ける・・・・。

「それに空ちゃんは何も悪くない。ただ不器用なだけで一生懸命に生きようとしているだけじゃん。海ちゃんも頭いい子だったから、空ちゃんが悪いとかそんなことは絶対に思わないだろうし」

誠也さんは一度私の顔を覗くとさらに続ける。
何度も何度も私を優しく接してくれる。

「だから空ちゃんも、もっと前向きに物事を考えないと。笑って生きていたら、辛いことがあっても乗り越えられるよ」

笑って生きていたらか・・・・。

不思議との言葉は私の心に突き刺さる。
確かに今の私は全然笑えてないもんね。
と言うより、『自分から笑う』なんて今の私には出来ないし。

いつも仲間が笑顔にさせてくれるだけだし。

そして誠也さんの励ましの言葉に続いて、女の人の声が聞こえた。
聞いたことのある明るい女の人の声。