一方のおばあちゃんは疲れている表情を見せると、私の前の席に腰掛ける。
休憩の時間なのか、一息付くおばあちゃん。

「よっこいしょ。この年になると、ちょっと立ち仕事が辛いわ。まだまだ現役だけど、将大や誠也の客ばっかじゃから、話もついていけん」

おばあちゃんはテレビのリモコンを手に取ると、チャンネルを変え始めた。
でもおばあちゃん好みの面白い番組はやっていなかったのか、一周回ってまたさっきのバラエティー番組にチャンネルを戻す。

そしておばあちゃんはテレビから私に視線を戻す。
同時に私の『心の異変』にすぐに気が付くおばあちゃん。

おばあちゃん、私の心を読むのが本当に上手・・・・・。

「どうした？箸が進んでおらんぞ」

箸が進んでいない。
その言葉の意味を理解した私は、顔を上げて慌てて否定する。

「あっ、そんなことないよ。スッゴく美味しいし」

また心配されるのが嫌だったから、私はコロッケを一口かじる。
『美味しい』と言ってと笑顔をこぼそうと思ったけど、やっぱりおばあちゃんには私の心は丸見え。

味噌汁の入った器に手を当てて、私と味噌汁の温度を確認するおばあちゃん。

そしておばあちゃんは怒りだす・・・・・。

「こら空、また冷たい飯を食いやがって。誠也！」

おばあちゃんの声に、裏で作業をしている誠也さんが返事を返す。

「はーい！なんですか？」

「ちょ！おばあちゃん！誠也さんも来なくて大丈夫なのに・・・」

一方で私はおばあちゃんと誠也さんを止めようとしたが、誠也さんは笑顔で私達のいる部屋に現れた。
お客さんと接客する時の笑顔を見せる誠也さん。

そんな誠也さんに、おばあちゃんは注文を告げる。

孫を心配する、優しいおばあちゃんの注文・・・・・。

「仕事じゃ誠也。空を励ませ。こいつ、また冷えた飯を食うとる」

おばあちゃんの言葉に、誠也さんは小さなため息を吐く。

「また？ホント空ちゃんは冷たい飯が好きだよね」

「ご、ごめんなさい」

私の声に誠也さんは優しく微笑む。

「別に謝らなくていいよ。でもコロッケもお味噌汁も、暖めた方が美味しいからね」

誠也さんは一つ間を置くと続ける。

「だから没収。ちょっと待ってて」

そう言うと誠也さんは私の晩御飯が乗せられたお盆を持ち出すと、部屋を出ていく。
言葉通り晩御飯を『没収』される。