この店の名物料理である『泳ぎアジフライ』は、オーダーを受けてから水槽のアジを捌いてフライにするから、鮮度もよくてスゴく美味しい。
私も一度食べた事があるけど、本当に美味しかった。
お客さんも、興味があるのか頻繁に注文してくれる。
まあ、私の場合はそのオーダーを聞くだけで、ちょっと気持ち悪くなるんだけどね。
お父さんも誠也さんもイタズラに、真っ赤なまな板を見せてくるし。
私をばかにしてくるし。
そんな見てられないお父さんの仕事姿から、私は視線を変えた。
『板場』と呼ばれるお寿司を握ってくれる場所を覗く。
そこには無言で寿司を握り続けるおばあちゃんの姿があった。
今年七十五歳のおばあちゃんは黙々とオーダーのお寿司を一人握り続ける。
と言うか女性の寿司職人って、何だか珍しいよね。
おばあちゃんも『まだまだ現役』って自ら言っていたし。
私もカッコいいおばあちゃんのような寿司職人にになろうかな。
そんなおばあちゃんの姿を確認していたから、後ろからお父さんの声が聞こえた。
さっきのアジにパン粉を付けて、油の中にアジを入れるお父さんは私に提案する。
「こんなことより空、飯食ってこいよ。今日は腹減ってるんだろ?」
確かに今日はお腹が空いている。
昨日同様にたこ焼き屋さんに行ったけど、たこ焼きを食べたのは海ちゃんだけだし。
「うん。今日はお腹すいているから食べる」
お父さんは小さく笑う。
親としてか、一人の料理人としてか、嬉しそうな表情を私に見せるお父さん。
昨日の暗い表情は完全に消えている。
「そうか」
・・・・・・。
でも本音を言うと、『お腹は空いているけど、全く食欲がない』のが現状。
今日の出来事に対して、未だに脳が追い付いていない私。
私のせいで、海ちゃんがいじめられている現実が未だに受け入れられない・・・・・。
そしてそれを思い出すと、どんな楽しい時間でも急に不安に包まれる。
まるで真っ黒な不気味な雲に飲み込まれるように、自然と辛い気持ちに押し潰されそうになる。
それに私、『なんで関係のない他人を巻き込んで、呑気に生きているんだろう』って、時々思う。
大切な友達の海ちゃんまで巻き込んで、本当に最低な私だと振り返る。
辛い想いをするのは私一人で充分なのに・・・・・。
私も一度食べた事があるけど、本当に美味しかった。
お客さんも、興味があるのか頻繁に注文してくれる。
まあ、私の場合はそのオーダーを聞くだけで、ちょっと気持ち悪くなるんだけどね。
お父さんも誠也さんもイタズラに、真っ赤なまな板を見せてくるし。
私をばかにしてくるし。
そんな見てられないお父さんの仕事姿から、私は視線を変えた。
『板場』と呼ばれるお寿司を握ってくれる場所を覗く。
そこには無言で寿司を握り続けるおばあちゃんの姿があった。
今年七十五歳のおばあちゃんは黙々とオーダーのお寿司を一人握り続ける。
と言うか女性の寿司職人って、何だか珍しいよね。
おばあちゃんも『まだまだ現役』って自ら言っていたし。
私もカッコいいおばあちゃんのような寿司職人にになろうかな。
そんなおばあちゃんの姿を確認していたから、後ろからお父さんの声が聞こえた。
さっきのアジにパン粉を付けて、油の中にアジを入れるお父さんは私に提案する。
「こんなことより空、飯食ってこいよ。今日は腹減ってるんだろ?」
確かに今日はお腹が空いている。
昨日同様にたこ焼き屋さんに行ったけど、たこ焼きを食べたのは海ちゃんだけだし。
「うん。今日はお腹すいているから食べる」
お父さんは小さく笑う。
親としてか、一人の料理人としてか、嬉しそうな表情を私に見せるお父さん。
昨日の暗い表情は完全に消えている。
「そうか」
・・・・・・。
でも本音を言うと、『お腹は空いているけど、全く食欲がない』のが現状。
今日の出来事に対して、未だに脳が追い付いていない私。
私のせいで、海ちゃんがいじめられている現実が未だに受け入れられない・・・・・。
そしてそれを思い出すと、どんな楽しい時間でも急に不安に包まれる。
まるで真っ黒な不気味な雲に飲み込まれるように、自然と辛い気持ちに押し潰されそうになる。
それに私、『なんで関係のない他人を巻き込んで、呑気に生きているんだろう』って、時々思う。
大切な友達の海ちゃんまで巻き込んで、本当に最低な私だと振り返る。
辛い想いをするのは私一人で充分なのに・・・・・。