「ちょっと空ちゃん?なんで泣くのさ。『友達』って助けるのが当たり前でしょ?ある意味空ちゃんが私にそう教えてくれたんだし」

海ちゃんの言葉に、孝太くんも続く。

「そうだぜ。それにここまで仲がいいと親友みたいなもんだしよ」

親友と言う言葉に疑問を抱いた海ちゃんは、孝太くんに問い掛ける。

「じゃあ友達と親友の違いってなに?孝太くん」

孝太くんは考え始めた。
孝太くんは答えを知っているかと私と海ちゃんは思っていたけど、そうでもないみたい。

「知らね。どっちでもいいんじゃね?」

「えー、なんでその流れてその回答?ってか言ったの孝太くんじゃんか!」

「自分で調べろ。とにかく早く遊びに行くぞ」

「うん!あっ、でもその前に教室に戻らないと。ってか私エプロンのまま。あと結局ハンバーグ食べてないからお腹すいた。今日の選択科目が楽しみだったから、お昼ご飯食べてないし。だから孝太くん、何か奢って?」

「しらね」

「なんで酷いこと言うのさ!空ちゃんでもいいんだよ?」

二人の会話にイマイチついていけない私だから、急に海ちゃんに見つめられて戸惑う私。

イマイチ、『友達』と言う関係にまだ慣れていない私。

でもそんな私を『友達』の孝太くんは助けてくれる。
『友達』の海ちゃんをからかう言葉を交えながら。

「空、無視しろ。コイツアホみたいに食うから、財布の中身がなくなる。つか自分で買って食え」

「えー。私金欠だし」

「しらねー」

孝太くんの冷たい言葉に、海ちゃんは頬を膨らませて反論する。

「ちょっと!私が困っているんだから助けてよ!友達でしょ?」

「人の金が尽きるまで飯を食べるお前は、友達でもなんでもない」

「ちょっと孝太くん酷いよ!本当は私のことが好きなくせに」

直後、孝太くんの顔が赤く染まる。
これは見ていて面白いかも。

「うっせーな!すぐに暴力する女、俺は嫌いだな。気に入らない奴はみんな殴るお前だし。俺は清楚な女の子が好きだし。お前は論外」

「何よそれ!ムカつくからちょっと殴らせろ!バカ孝太くん!」

「おー怖っ!つか生徒指導室の前で同級生に暴力とか、頭おかしいだろ?アホ海」

「孝太くんから『殴ってもいい』と言う合意の元で殴っているから、何に問題ない」

「おい!俺は何も許可だしてねぇよ!つか本気で殴んな!」

「ばーか!くたばれバカ孝太くん!」

「やんのか?こら!」

・・・・・。

何だろうこの夫婦漫才のような光景。
どう見てもカップルにしか見えない。

孝太くんの存在が許せないと言うように、孝太くんに拳を降り下ろそうとする海ちゃん。
孝太くんはそんな攻撃効かねえよと言うように、一つ一つ海ちゃんの攻撃を手で受け止めて、海ちゃんを見下ろしている。

そんな幸せそうな二人を見ていたら私にもようやく笑顔が溢れた。
生徒指導室の前なのに殴り合いをする目の前の『バカップル』に、私は可笑しくて笑ってしまう。

そういえば最近の私、『学校でよく笑うな』って振り返りながら・・・・。

そして孝太くんも私の笑顔を見て、私のためになることを言ってれた。
どさくさに紛れて、私にも喧嘩を売り出す孝太くん・・・・。