「よし!今日もどっか遊びに行こうぜ!ゲーセンとかどうだ?」

その孝太くんの言葉に、海ちゃんも笑顔に変わる。

「賛成!って言いたいけど、孝太くん部活いいの?」

「気にすんな。今朝廃部届け出したし」

「えっ、ホント?」

「あんな奴らと一緒にいるくらいなら、『辞めた方がマシ』だと思ったからよ。時には『諦めること』も必要だと思うしよ」

時には諦めることも必要か。
なんか今日の孝太くんの言葉、時々今の私の心に突き刺さる。

「ってなわけで、パーと遊ぼうぜ!空もなんかまた心が荒んでいるみたいだしよ」

孝太くんの言葉に私は驚く。
まるで心の中を読まれている気分で少し焦る私。

「えっ?わ、私?」

「見たらわかるつーの。どうせあれだろ?『海がいじめられたのは、自分のせいだ』って思っているんだろ?」

言い当てられて、私は孝太くんから視線を逸らした。
今の私の視線は孝太くんの足元。

ちなみに『都合が悪くなると目を逸らす仕草』は、私の癖。
無意識に目を逸らしてしまう癖は昔から続いている。

そんな私と海ちゃんの肩を叩いて、私達を励ましてくれる孝太くん。

「松井先生とさっきすれ違って言っていたんだ。『ヤベー影に包まれている二人を支えてあげてくれ』って。『特に空は今日の一件でまた酷く悲しんだから』って。お前の場合は弟も亡くなっても、『頑張ろう』ってしているのによ」

孝太くんの言葉に続くように、海ちゃんは頷く。

「そうだよね。今一番辛いのは空ちゃんだよね!よし、私も空ちゃんのために頑張ろっと!それに今の私、『空ちゃんのためにいじめられている』って感じたら、不思議と辛くないし。だから自分に対しての暴言や行動はまだ我慢出来るけど、今回は空ちゃんをバカにする北條が許せなくて喧嘩を買っちゃったって言うか」

海ちゃんの言葉通り、さっきの海ちゃんの行動を思い返してみたら、確かにそうだと私は思った。

先程の調理実習。
北條さんに自分への暴言を吐かれても、我慢していた海ちゃん。

でも急に北條さんが私の暴言を吐いた途端、海ちゃんの目が変わった。
心の底から『許せない』と言うような、海ちゃんの見たことのない怒った顔・・・・。

そうやって私のためだけに体を張ってくれる海ちゃん。

一方で私はホントに何やってるんだろう。
ここまでしてもらって、海ちゃんに何も返せてない・・・・。

・・・・・・。

「ごめん」

その小さな私の呟きと同時に、私の目から涙が溢れ落ちた。

情けなく二人の前で涙を流す私。
また心配されちゃう。