帰りのホームルームになっても、海ちゃんと北條さんは帰ってこなかった。

松井先生もホームルームの時間になっても現れず、代わりに副担任の先生がホームルームを指揮してくれた。
社会科を教えるイケメンの男の先生。

そしてその帰りのホームルームも終わり、放課後を迎える私達。
学校が終わって、次の行動に移る生徒達はあっという間に教室から消えていく。

私も『早く帰ろう』と思っていた。
重たい腰を上げて、私も教室を出る。

・・・・・。

このまま生徒玄関に向かってもよかった。
でもその生徒玄関までの道のりには、たくさんの生徒達。

正直言って、人混みの中は今は歩きたくないし、今は一人になりたい気分。

だから私は少し遠回り。
生徒玄関のある方向とは逆方向に歩き出し、あまり人のいない廊下を歩いて行く私。

遠回りに一階の生徒玄関に向かおうとする。

途中で「生徒指導室』の前を通りながら。

・・・・・。

「うっす」

聞き覚えのある声に私は反応すると、生徒指導室の前で腰を下ろす孝太くんの姿があった。
壁にもたれながら廊下で腰を下ろし、退屈そうに自分の携帯電話を眺めていた孝太くん。

そういえば孝太くん、帰りのホームルームに居なかったっけ。

「孝太くん?どうしたの?」

孝太くんは私から視線を目の前の生徒指導室に移す。
どうやら『中を見てみろ』と言うことなんだろう。

私は孝太くんの言う通り、恐る恐る生徒指導室の中を外から確認。
バレないようにゆっくり中を覗き込む・・・・。

・・・・・・。

するとそこには先程の若い男の先生と一緒に出ていった、海ちゃんの姿があった。
あれからずっと話しているのか、未だにエプロンの姿の海ちゃん。

どうやら孝太くん、海ちゃんを待っているみたいだ。
『心を痛める海ちゃんの側に居よう』としているのだろう。

その姿はまるでカップルみたいに見えた。
本人達は否定しているけど、私にもうカップルにしか見えない。