『クソビッチ笑　川下海』

『うるさいだけが取り柄のブス』

『暴力女。サイテークソ女』

『クズ川下』

『生きる価値のないゴミ』

他にも色々と海ちゃんへの酷い落書きが書かれていた。
教室の黒板を埋め尽くすほど、見てられない内容。

そして耳をすませば今日のノイズは海ちゃんの酷い言いがかり。

「聞いた？川下って、家がヤバイから色んなサイトで金稼いでいるみたいだよ」

「それってエンコウってやつだっけ？」

「影で北條を脅しているって、北條本人が言ったらしいし」

「噂じゃ公園の猫に石投げて動物虐待とかしているみたいだし」

「まじかよ。川下って結構いいやつだと思っていたけど、最悪なやつだな」

そんな最悪の空間の中、海ちゃんは立ち止まっていた。
そんなことしなくていいのに、黒板の文字を一つ一つ読み上げていく。

そして小さく呟く海ちゃん・・・・。

「なんで？どうして私？って私の席がない」

その海ちゃんの声に私は教室全体を見渡してみたが、確かに海ちゃんの席はなかった。

教卓から離れた一番後ろの廊下側の席が、海ちゃんの席なのに。
そこには机も椅子も何もない。

・・・・・・。

一方で、この今の現状を経験した私はすぐに現状を理解した。

『私がされたことを、今度は海ちゃんをターゲットにして繰り広げられている』って・・・・・。

そして『私の代わりに海ちゃんがいじめられている』と言うことは、嫌でもわかった。
嫌でもわかったから、私はすぐに窓の外を確認。

中庭に繋がる、二階の教室の窓の下。

・・・・・。

酷いものだ。
海ちゃんの席は窓から投げ捨てられて、引き出しに入っていた海ちゃんの教科書も無造作に中庭に散らばっている。

昨日は雨だったから、多少地面がぬかるんで教科書には泥が付いているし。

本当にこれは酷すぎる・・・・。

そんな中、朝練を終えたのかサボったのか分からないが、何も知らない孝太くんが教室に入ってきた。
口笛を吹きながら、何も知らない彼は、いつもの表情でやって来る。

そして彼もこのクラスの闇を改めて知った。
自分の大切な友達への嫌がらせに、孝太くんはすぐに怒りを露にする。

「・・・・おい、こら。誰がこんなことしやがった！」

孝太くんは怒り狂った怖い目で、静まり返った教室を見渡した。
クラスメイトはみんな、知らない顔を浮かべている。

でもそんな中、孝太くんの声に一人の女の子が手を上げた。
自分の席でダルそうに座っている女の子のその姿は、怒り狂った孝太くんに喧嘩を売っているのと同じようなもの。

「はーい！あたしです」

その女の子とはもちろん北條さんのことだ。
現状に対して面白いのか、北條さんから笑顔がこぼれる。

自分の存在をアピールする北條さん。

そんな北條さんの『自首』に、孝太くんはすぐに行動に移った。
孝太くんはすぐに北條さんがいる席に向かうと、彼女の机を大きく叩いて海ちゃんのために訴えた。

見たことのない孝太くんの怒った表情・・・・。