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 電車に乗り、最寄りの駅から家まで全速力で走った。

 紫織は宏樹と朋也の家の前に着くなり、肩で何度も息をする。

(宏樹君、ほんとにいるの……?)

 胸を押さえ、呼吸を整えてから、紫織は玄関の前まで歩いて行ってインターホンを押そうとした。
 ところが、緊張と疲れが一気に押し寄せてきたせいか指先が震えている。

 一瞬、無理に今日じゃなくてもいいじゃない、と考えた。
 しかし、ここで背を向けてしまっては、苦しい思いをしてまで走って来た意味がない。

 紫織は気合を入れ直し、今度こそ押した。

 ピンポーン、と外にまで響く。

 少し待つと、玄関のドアがゆっくりと開かれた。

「――紫織?」

 姿を見せたのは、宏樹だった。

「もしかして、卒業式終わった?」

 宏樹に問われ、紫織は大きく頷く。
 そして、一度息を大きく吸い込んでから、意を決して口にした。

「――宏樹君、約束、憶えてる?」

 宏樹はわずかに目を見開いてから、「ああ」と答えた。

「ちゃんと憶えてるよ。――紫織が高校を卒業してから、だっけ?」

 まるで他人事のように言っているが、確かにちゃんと記憶していたらしい。

 紫織は宏樹の口から改めて訊くことが出来て、喜びを隠しきれなかった。