ギルドハウスを出て次に向かったのは街の一番奥にある1番でかい建物で領主様の館だ。

そこはでかいと言っても豪邸と言うほどの規模ではない。
精々一般の建物が2つから3つ分って所である。
領主であるクリス・アイガウス子爵はこの大きさですら『大きすぎるから』と言って小さくしようとしたり、分譲して売りに出そうとしたり・・・

(はぁ・・・
この街のトップ達はギルマスといい領主様といいとにかく目立ちたがらない。
庶民派と言うべきか、自己を過小評価しているのか・・・)

「あの・・・ヴィルヘルム様
領主様は中でお待ちしております
早急に向かっていただけると幸いです」

考え込んでいたら下の方から遠慮がちに声が掛かる。

「ん?あぁ・・・すまんなコルツ
後もう1つすまないが下から声は聞こえるが姿を見せて欲しい」
「恥ずかしいので嫌です」

下の方から声だけがまた響く。

「むぅ・・・メイド長たるものが姿を見せないのは無礼に当たるのでは?」
「むむむ・・・一理ありますね
今回は従いましょう」

そう言うと徐々に顔を真っ赤にしたコルツが姿を現した。

「さすが家守族|《シルキー》だな
隠蔽の魔法など俺らじゃ使えないってのに
それにしても家の外で姿を現すのが恥ずかしいというのは俺からしたらなかなかわからない感覚だな・・・」

銀髪で肩より下ぐらいの小柄の女の子にしか見えないが多分この街最強の一角ではないかと思う。
だが館から外には出たがらないのと守るのは館のみ、他はどうなろうと『どうでもいい』らしい。

「人族からしたら裸で歩いているようなものです・・・
も、もうよろしいでしょうか?」

モジモジしながら辺りを気にしている。

「あぁ、悪い
そういえばコルツならベリアグの森にあった神殿について何か知ってるか?」

目の前からすーっと消えていくコルツに問いかける。
シルキーは長寿というか寿命の概念がない。
自身の魔力が尽きた時死ぬと言われているが魔力を持つものが近くにいる限り朽ちることは無いらしい。
そんな彼女なら何かしら知っているはずと思い聞いてみた。

「神殿?
えーっと・・・『ビエラの神殿』の事でしょうか?
1度顕現して挨拶に来たけどその時ここら辺は戦争しててそれどころじゃなかったんですよね・・・」
「なるほど・・・ギルマスも把握できてないわけだ」
「あのドワーフ|《モグラ》は本土の防衛してましたね」

姿を見せていた緊張が解けたのか本来の話し方に戻りつつあるコルツ。

「コルツ・・・いくら仲が良くても面と向かってあまりその単語は使わない方がいいと思うぞ?」
「おっと、失礼しました」

頭を下げているように感じるが見えないから声の響のみで判断せざるおえない。

「さて、早急にと言う命令もありましたのでそろそろ向かっていただけないでしょうか?」

ぱんっと手を叩く音と足元に魔法陣が展開される。

「時間を使わせて済まなかった
歩いていくから大丈夫だからこれは解じょ・・・」

話している途中で眩い光に包まれた。