「・・・ふぅ。この地域の調査と薬草採取はこんなもんでいいか」

俺は袋いっぱいの薬草と羊皮紙に纏めた報告書を背中のリュックに詰め込んだ。

「・・・にしてもここへはなんで誰も来ないのか・・・
そんなに遠い訳でもないし魔物もそんなに強い訳でもないし・・・」

と言いながら森の拓けた草むらに寝転がる。

「こんなに気候も穏やかなのになぁー」

空を見上げボーっと物思いに耽ける|《ふける》。

(ここを開拓して小規模でも耕作地帯にしたら街の食料問題も少しは回復するんだがな・・・
国の方針で輸出用の綿花ばかり栽培させるからこういうことになるんだ
そもそも輸出した金で食材輸入してたらどうしようもない上に更に軍備に回すとか・・・)

今の国の現状を悲嘆し黄昏れていると急に曇りだし雨が降りそうな天気になってきた。

「雲行きが怪しくなってきたな・・・
ひと雨来る前にどこか雨避けの場所を探さないと・・・」

俺は立ち上がり荷物の確認を手早く済ませるとゆっくり歩き出した。

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案の定雨が降り始め服を濡らす。
急いで雨をしのげる場所を探そうと辺りを見渡したが森の中では雨風が凌げるようなものは見当たらない。
(本拠点にテントを出しっぱなしにしてたのが裏目に出たな・・・
1度戻るべきか・・・?)

そんな風に思案しながら歩いていると足元に気になる痕跡を見つけた。

(ん?獣道か?
足跡の大きさ、形からしてベリアって所か・・・
あいつらは濡れるのを極端に嫌がるしこの足跡はまだ新しいな・・・
もしかしたら辿れば洞窟があるかもしれない
住処なら申し訳ないが少しの間間借りさせてもらおう・・・)

俺はそう考えながら歩くスピードを上げた。

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足跡を追い掛けしばらくすると森の中にひっそりと佇む建物を発見した。
そこらじゅうがボロボロで今にも倒壊しそうな見た目ではあるが雨風はしのげそうだ。

(体も冷えてきたしここを間借りさせてもらおうか)

そう思い歩みを進めると急に雨が止んだ。

(急に止んだな・・・どのみちびしょ濡れだから乾かすためにも借りるしかないがな・・・)

少し自嘲気味に笑い俺はその建物に入っていった。

「・・・ん?ここは神殿か?」

中に入るなり俺は中の構造と一つだけ置かれた像をみてそう呟いた。
そこには一人の『少女の石像』があった。
だが、その像も老朽化が激しく両腕が欠損しそこら中がひび割れていた。

(ん?なぜ俺は少女の石像と断定できたんだ・・・?
顔も姿もボロボロでイマイチ全容が掴めないのに・・・)

不思議だなと思いつつ道端で拾っておいた枝をまとめ火をつけることにした。

「小火きゅ|《フォイ》・・・・・・っと、その前に・・・
ここに住まう神よ!しばしの間お邪魔することをお許し頂きたい!」

魔法を唱えようとしたがその前にここの主に挨拶だけすることにした。

「さて・・・改めて・・・小火球|《フォイア》!」

そう唱えるとてから小さな火の玉が現われ枝に火がついた。

(しかし・・・この神殿は誰にも手入れすらされていなかったのか・・・
この神殿について知っている人がいたら聞いてみるか
それにこのままではここにもし本当に神様がいるとしたら可哀想すぎるな)

そう考えながら服を脱ぎ乾かし始めた。
これがまさか神の子だ聖人だ言われるきっかけになるとは思いもしなかった。