「え? 由実? 由実はね」

 声を弾ませ、話そうとする舞依を琥太郎さんが制した。

「ここに長居はよくない。場所を変えよう」

 琥太郎さんは舞依の袖を引き、私から距離を取った。

 眉をひそめ、怪訝な顔。
 口元に手を当て、声が漏れないように話している。

 私に聞かれては、まずいのだろう。
 ここに来てはいけなかったのかもしれない。

「ごめんね。私、おばあちゃんの家に遊びに来ただけなの。おばあちゃんに顔を見せてくるよ」

 表面的に笑った二人が手を振ったのを確認し、おばあちゃんの家へ足を向けた。
 おばあちゃんの家は、ここから少し坂を下った先にある。

 ごめんって何が? そう思うのに、取り繕う言葉が自然に口から出ていた。

 子どもの頃も感じた疎外感。
 所詮は余所者だ。

 小さな村。入り込めない壁を感じた。