「琥太郎! こんなところに」

 後ろから女性が現れ、琥太郎さんの肩に手を置いた。親しげだ。
 二人ともこの村の人たちなのだろう。

 女性の顔がこちらを向き、もう一度驚くことになる。
 くっきりと大きな黒目がちの瞳は、あの頃の面影を色濃く残していた。

「もしかして、麻依?」

 大きな瞳をこぼれ落ちんばかりに丸くした女性は、近づいて腕をつかんだ。

「美樹? 美樹なんだね!」

 祖母の家に遊びに来た私は、村に住んでいる子たちと仲良くなった。
 麻依もその一人だ。

「懐かしい。そうそう由実は? 今も泣き虫ってわけじゃないよね」

 懐かしさに目を細める。

 麻依と、それから由実と。
 この土地で仲良くなった。

 三人でここを秘密基地と決め、毎日のように遊んだ。

 もちろん麻依とも仲良かったけれど、泣き虫で頼りない由実といると自分がお姉さんになった気がして嬉しかった。
 一人っ子で妹が欲しかった私は、嬉々として由実のお世話係りを買って出た。

 リーダータイプの麻依と、泣き虫の由実に、お姉さんを気取っている私。
 当時はそんな三人で遊ぶことが、何よりも楽しかった。