「トモさんはさ。知らない土地の、しかもどちらかと言えば排他的な」
私が全部を言い切る前に、トモさんの声で遮られた。
「俺は難しいことは分からん。ただ美樹ちゃんは、どーんと飛び込んで来ないタイプだと思ってた」
「トモさんには飛び込めないですよ」
「ハハッ。これは言われちまったな。でも俺だけじゃなく誰にも飛び込まないだろ? 琥太郎だとしても」
琥太郎さんに、飛び込む。
自分のネガティブな消極的で悲観的なこの性格を、そのまま曝け出せる人なんて存在しない。
「おーい。電話で黙られると困るだろ?」
フッと浮かぶのは父の顔。
目の前に居ても、お互いに続ける言葉は探さないと出てこない。
父は探してもないだろうけど。
電話なのに、黙る父。
そんな父と私も同じ。
「ごめんなさい。つい考え事をしてしまって。その、余所者って雰囲気が嫌じゃないですか?」
トモさんは、もう余所者ではないのかもしれないけど。
「なんだよ。それ。俺よりも美樹ちゃんの方がおばあちゃんの家もあるし、余所者じゃないだろ?」
呆れた声を聞いても、溢れた思いは止められなかった。