大村から普段の生活に戻ると、現実に引き戻された気がする。
時計に追われる生活。
「田植え面白かったです。稲刈りも行きますよね!」
バイタリティあふれる綾美は都会暮らしも似合っているし、田舎暮らしでもやっていけそうだ。
何よりトモさんと意気投合していた。
ぼんやり思っていると、綾美がアイディアを口にした。
「昨日みたいな時に、農作物を売ればいいのに。あの美味しい豚汁は、この野菜で出来てるんだ〜って思えばきっと買いますよ」
「いいね。それ」
「特産品でデザート作ったりね」
「それもいい。さっそく……」
ふと協力隊の三人の顔が浮かんで、心が曇って行く。
「どうしました?」
「ううん。なんでもない」
私の意見は、もういらないのかもしれない。
どうしてこんなに、心が沈んでいくのかは分からない。
ただ大村も琥太郎さんも、今の私には癒しの場所では無くなってしまっていた。