「美樹は優しいなぁ。琥太郎なんて、これが現実。とか言うんだよ。ま、ただの憧れだったしね」

「琥太郎さん案外、厳しいんだね」

「そうなんだよー!」と言いながら、懐かしむように見たことのない『わたなべえいた』さんのことを教えてくれた。

「近所のお兄ちゃんで、面倒見のいい人で。五つ離れてたからね」

「年上好きだったもんね。子どもの頃も」

「そうだね。まだ小学生低学年くらいなのに男は年上だよね。同じ歳はギリギリで、年下は無い。とか言ってたよね」

 懐かしい思い出。
 一番年上好きそうな由美が、年下もいいと力説していたことが面白かった。

「子どもの頃から、男は年上よね〜なんて女っていくつでも女なんだなぁ」

「琥太郎が、女は怖いってよく言ってたなぁ」

 舞依のしみじみ発した言葉が面白くて、プッと吹き出すと二人で大笑いした。

 たくさん話して、もうさよならの時間だ。

「次は夜祭りの時だね」

 連絡先を交換したけれど、田んぼや畑に忙しくて返事が遅くなると言われた。

 今回は、祖母の家に顔を出す時間が無かった。

 遠くに見える祖母の家に「また来るからね」と呟いて駅へと向かった。