「うん。実は、その時の私が好きだった人」

「えー! それを他人の私と将来、恋人になるなんて決めたりする?」

「ごめん。だって自分となんて、恥ずかしくて言えないよー」

「で、どんな人なの? 琥太郎さんは、実在するなんて言ってくれなかった!」

 背が高くてイケメンで? 会いたいような、会いたくないような。

「琥太郎なりに、気を遣ったんだよ。夢が壊れるといけないから」

「夢、壊れちゃうの?」

 私のがっかり感満載の声に、苦笑した舞依が懺悔するように片手を上げた。

「はい。四人の子持ちで、見事に幸せ太り。まぁ幸せオーラは出まくってるね」

「四人かぁ。すごいなぁ。しかも結婚してるのね。舞依は近くで見てたわけでしょ? 辛くなかった?」

 私は楽しい思い出のだけだけど、舞依にとっては現実だったわけで。