「舞依は、さ。恋人は?」

「何よ〜。私は恋人の名前、決めなかったわよ」

「私は琥太郎さんにまで『わたなべえいた』を待ってるの? なんて聞かれたよ」

「そうなの? 琥太郎の奴〜」

 笑う舞依は、続けて驚くことを口にした。

「渡辺瑛太って、実はいるんだ」

「え? 実在するの?」

 細かい設定をキャーキャー言いながら決めたのも、懐かしい思い出だ。
 背は私よりも二十センチ高くて、細身だけど力持ちでって。

 力持ちという設定が小学生っぽくて、思い出すと微笑んでしまう。

 髪はサラサラの、目にかからないくらいの爽やかな髪型で。
 もちろん優しくて爽やかで、そんな人がいたらすごい。