「美樹ちゃんはさ。本当に、渡辺瑛太を待ってるの?」
「まさか。あれは、空想のお話ってことくらい分かってる」
「ハハッ。そうだよね」
懐かしいな。
あの頃は純粋でキラキラしていて。
「大人に、なりたくなかったな」
懐かしい思い出に、つい本音をこぼした。
「どうして? 俺は早く大人になりたかったよ」
それはどうして? と聞く前に、琥太郎さんは立ち上がった。
大人になりたかったと、大人になった今でも言える琥太郎さんは、今を懸命に生きられているのだろう。
私は、私は今を懸命に生きている?
本当に?
「よし。みんなが帰らないうちに、協力隊のみんなを紹介しないと」
実行委員らしくキビキビと動き、即席で作られた壇上へと向かって行った。
協力隊の、みんなって。
その疑問は、琥太郎さんの後に続く人達を見て理解した。
トモさん以外の人も決まったのだ。
三人募集すると言っていた。
琥太郎さんの後を、トモさんの他に二人。
若いひょろっとした男の人と、これまた若そうな女の子。