「何が本当?」

 気を抜いていた背後から、声を掛けられた。再びむせ返りそうになり、声を上げる。

「琥太郎さん!!」

「いえね。美樹さんが」

 驚きもしない綾美が、しれっと変なことを口にしそうで慌てて制止する。

「もう綾美は余計なことを言わないの!」

 私の言葉も虚しく、止めても聞くような綾美ではない。

「お母さんから見合い話を持って来られるって、嘆いてたじゃないですか」

「綾美!」

「ははっ。私は退散しまーす」

 怒ったところで、堪えていない綾美は戯けながら席を立った。

 初めての場所でも平気な綾美はトモさんに話しかけ、トモさんも鼻の下を伸ばしている。
 こっちは地雷を落とすだけ落とされて、気不味いのに。

「美樹ちゃん。あの〜」

 琥太郎さんもとんだとばっちりを受け、気不味そうだ。

「いいの。何も言わないで。慰められた方が惨めになるから」

 両手を振り、何か言い出しそうな琥太郎さんを遮った。
 気を遣わないで欲しいと訴える。