「なかなか体験できませんね。こんなこと」
 楽しそうに笑う綾美は、既に植え終わったみたいだ。けれど綾美の足元から、稲が浮かんでいく。
「説明通りに失敗してる」
「え!ヤダ。本当。難しいな〜」
「どれどれ。コツをお教えしようかな」
 目敏く見つけたトモさんが近寄ってきた。若い女の子だから優しいんですよねって、穿った見方で見てしまう。けれど説明も植え方も上手い。そこはさすがだ。
「美樹ちゃん。どう?上手く植えれた?」
 ずっと忙しそうに進行していた琥太郎さんが、声をかけてくれる。その側から他の人に植え方を聞かれ「ごめん。また後で」と聞かれた人の方へ行ってしまった。トモさんも他の人に連れて行かれ、また綾美と一緒に残りを植えた。