「最初はどんな野郎だって思ったけど、案外いい人だった」
「ははっ。軽い冗談ばっかりの人ってだけだったもんね」
「トモさんも美樹ちゃんの作ったホームページは見やすいし、今後にも触りやすくしてあるから助かったって」
仕事柄その辺りはしっかり作った。
ずっと私が手伝えるのか分からないのだから。
それでも褒められ、ビールが美味しく進む。
電話の向こう側で、まさかビール片手にスルメを咥えているとは思わないだろう。
忙しい時は大好きな食事も構ってられない。
「そうそう。田植えに、うちの後輩を連れていくね。若くて元気な子だよ」
「女の人? トモさんが浮き足立っちゃうよ」
こんなたわいもない話もして、けれど大村のゆっくりとした時間が電話から流れているみたいで、癒されるひと時だった。
「おばあちゃんが、大きなショッピングモールが建つって」
「あぁ。大型ショッピングモールの関係者が視察に来たからね」
「大丈夫、だよね?」
「大丈夫」
琥太郎さんが言うと、本当に大丈夫だと思えるから不思議だ。
おやすみなさいの挨拶をして、まだまだ長い夜は更けていった。


