手を横に振って否定する、琥太郎さんの腕でブレスレットが揺れる。
 それはボタンに紐を通し編んである、ブレスレット。

「そのブレスレットいつもしてるね。切れると願い事が叶うやつ?」

「あぁ。これ?これはお守り、かな」

 大切そうにブレスレットに手をやっている琥太郎さんに、質問を重ねようとしたところに別の人が通りかかった。

「なんだ。今日もこんなところで、油売ってるのか」

「トモさん」

 背後から話しかけられた形になった琥太郎さんが、驚いてトモさんの方へと振り返った。

 トモさんも、最初の印象こそ軽い信用ならない人だったが、頼りになる人だと判明した。

 海外青年協力隊をしていただけはある。

 リノベーションと言う名のDIYを着々と進め、五右衛門風呂を完成させた。
 薪割りもお手の物で、トモさんはここでの暮らしを満喫していた。

 通りすがりのトモさんは私を見て、意味深に笑った。

「俺は年頃の女の子と話せるとは嬉しい限りだがな」

 軽いイメージなのは、残念ながら払拭できないみたいだ。