リノベーションするとは言っていたけれど、あばら家の呼び名がピッタリの朽ちた部屋。
 今日から住めるとは思えない。

「電気ガスはまだ通っていませんが」

 そもそも生活の基盤が、そう思うのにトモさんはへこたれない。

「へっちゃらだ。キャンプ道具は、自前のがある」

 これには私が目を丸くした。
 その為の大荷物なのだと、合点がいった。

「どこでも生きていけそうですね」

 半ば呆れ気味に口にした言葉は、トモさんを喜ばせたみたいだ。
 頬を緩ませ、得意顔だ。

「見直した?」

「何をですか?」

 こういう人は付け上がるんだからと、睨みを利かせた。

「ハハッ。こりゃいいや」

 全くもって意に介さない様子で、笑っている。
 呆れて琥太郎さんを見やると肩を竦め、琥太郎さんも苦笑した。