「お新香を刻んで、お米の準備してくれる? せっかく美樹ちゃんが居るんだから、かまどでご飯を炊こうかしらね。」
冷蔵庫から沢庵を出し、まな板に乗せる。
沢庵は祖母のお手製。
「私が居るんだからって普段はどうしてるの?」
「一人だとねぇ。量がいらないから囲炉裏で鍋を使って作って、残ったのは冷蔵庫。便利よね。冷蔵庫」
父が生活が大変だろうからと、プレゼントしたらしい。
父は他にも水洗トイレやお風呂もプレゼントしている。
囲炉裏はあるけどオール電化だ。本当は電子レンジもジャーもプレゼントしたかったみたいだけど断られたらしい。何もかも便利にしちゃいけないって。
「久和も悪いと思ってるんだろうよ。跡継ぎになれなくて。」
祖母の言う跡継ぎはここに住んで家やお墓の面倒を見ることを指している。父としては離婚して嫁を連れていない息子では帰りにくいらしい。
どこを気にしているのか。気にしている箇所が間違っている。祖母が心配ならここに帰ればいいものを。