「いつの間にか美樹ちゃんも大きくなって。」

「そうだよ。料理するくらい大きくなったんだから。」

「ふふっ。そうね。歳を取るわけだわ。」

 祖母は曲がった腰に手を添えながら、囲炉裏へと鍋を運ぶ。

 美味しそうな匂いをさせながら、ゆっくり煮えていく。
 この感じが好きだ。

 ご近所さんに頂いた岩魚を、串に刺して塩を振る。
 ひれに化粧塩を施し、囲炉裏の灰に立てた。

 焼けるにつれ、ポタポタと岩魚の口から水分が滴り落ちる様を見るのも好きだ。

 この風景を失いたくなかった。