一度だけ参加した祭り。
記憶の端を辿ると、村を挙げての一大イベントだったことが思い起こされる。
そして由美との思い出も。
思いを馳せる私に、琥太郎さんは言葉を重ねた。
「夜祭りの別名を知ってる?」
「別、名?」
いたずらっぽく笑った琥太郎さんが、背筋が凍る声色で囁いた。
「神隠しの儀」
一瞬にして、白狐が舞い踊る情景がありありと浮かんだ。
笑うはずのないお面の狐。
その赤い口がニヤリと、した気さえした。
一度だけ参加した祭り。
それは特別な儀式への参加だった。
儀式の後はバラバラになるようにお面の人に連れられた。
家に帰れずに、連れ去られるのではないかという不安に駆られた覚えも蘇る。