「田植え希望の方ですか? こちらに記入をお願いします」

 受付の人が、顔を一目見て発した言葉。
 すぐに外から来た人間と分かるのだ。

 限界集落とも揶揄される村は、子どもよりもお年寄りの方が多いかもしれない。

 確か人口は千人弱。

 大村という村名は、昔こそ周りに比べて大きかったのだろうけれど、今では完全な名前負けだった。

 受付をすませると、実行委員の琥太郎さんが説明してくれると言う。
 連れてこられたのは小さな会議室。

 何枚かの資料を差し出された。

「今年が初めての試みなんだ。なかなか人が集まらなくてね。このような田んぼアートを目指してる」

 資料には踊る人の絵。これは。

「もしかして、あのお祭り?」

 夢だと思っていた光景。

 白い着物に、赤い袴姿でお面を付けて踊る人々。

 お面は白い狐。
 耳と口の赤が異様さを醸し出し、金色の目が怪しく光る。

 ありありと思い出す、幻だと思い込んでいた祭り。

「そう。大村の夜祭りだよ。大村の伝統行事だからね。田んぼアートと一緒に知ってもらいたいんだ」