「誰が腐れ縁だよ」

 後ろからぬうっと現れた琥太郎さんに、肝を冷やした。
 舞依も、ムッとした顔で抗議する。

「急に現れないでよ! ねぇ。美樹も、田んぼアートに参加するんでしょ?」

「田んぼアートって、何か知らなくて」

 舞依に代わり、琥太郎さんが説明してくれるという。
 舞依は用事があるからと、どこかに行ってしまった。

 ほぼ初対面の琥太郎さんと二人にされ、正直、少し気不味い。

 田んぼアートとは村おこしの一環で、稲の色が異なる古代米を上手く植えることで、田んぼをキャンパスにするのだと教えてくれた。

「この村を失いたくないんだ。ずっと育って来た村だし、思い出もたくさんあるから」

 遠い目をして話してくれる琥太郎さんにとって、この村は大切な場所なのだ。

 そんな風に思う人が集まれば、ここは守られていくのかもしれない。
 祖母の家もずっと。