サメ型タゲットに手間取ったせいか、3匹のモーターボートに乗ったタゲットが、今日子の乗ったモーターボートに追いついた。

　「周りを囲め！」リーダー格のタゲットが言った。少々苛立ちを見せている。

　3隻は、今日子のモーターボートをぐるぐる、回り始めた。
　「もう、逃げ場はないよ、お嬢ちゃん」
　タゲットの手には、チェーンの、先に重りがついた武器を持っている。

　いっせいに、そのチェーンを今日子にめがけて、放った。
　「くっ」狭い足場では、三方からの攻撃に、逃げようが、ない。

　さらに、タゲットは、ボウガンを放った。3本の矢を、2本避けたものの、1本は、右肩に命中した。
　矢の威力は、凄まじく、右手が上がらない。

　「これで、終わりだ。」タゲットは、言った。今日子は、その前に何の波紋を起こした。水に落とした石の波紋のように、モーターボートは、上下に揺れた。
　
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「海よ、割れろ。」今日子は、力の限り、叫んだ。

　今日子のモーターボートを中心に、円陣に海が、裂けた。今日子もタゲット達も、下に落ちた。その隙に、ゆるんだチェーンから、逃げた今日子。

　たけしが、人間の姿に変わって、矢を抜き取ろうとしたが、抜けない。

　リーダー格のタゲットが聞いた。
　「今まで、これほどの力を持った女神は、いなかった。お前は、いったいどこからきたのだ。」
　「私は、ただ兄に会いにきただけ。それ以上でも、それ以下もない。」今日子のそう言った顔は、苦痛でゆがんでいる。

タゲット達は、海に向かって入った。
　「逃げたのかしら」
　「いや、違うな」たけしが言った。
　「一旦、客船に戻ろう？」と言って、たけしは、モーターボートになった。

　客船は、まだ、追いつける場所にいた。
　艦上に上がった二人。
　「誰か、お医者様は、いらっしゃいませんか？」たけしが、探してまわった。

　「わしは、田舎の医者だが、どうしたのだ。」
　スティルブンスは言った。

　「これは、重症だ。設備のある場所じゃないと、治療できないかもしれん。」
　「この矢だけでも抜けませんか？」今日子が言った。」
　「そうなると、この右手を肩から、切り落とさないと、取れない。」
　
　今日子は、少し考えて、
　「そうしてください」と言った。
　「正気かね、もう、右手は使えんぞ。」
　スティルブンスは、諭した。

　「はい、もちろんです。」そう言って、今日子は、気を失った。

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　気づいた時は、ベッドの上だった。右肩が、熱い。麻酔は、していないので、痛みが、繰り返し襲ってくる。

　スティルブンスが言った。
　「気分は、どうかね？」
　「最悪です、先生」と言って、今日子は、笑った。
　「君のお兄さんから、事情は聞いた。君がタイムクラスターの力を持っているのなら、それを使って、右手をつければいい。」
　「先生、押さえていて、もらって、いいですか？」
　「俺もいるぞ？」たけしが言った。
　「ありがとう」今日子は言った。

　いかに、タイムクラスターを使おうとも、痛みまでは、なくならない。
　「うわー」もう一度、気を失いそうだった。

　「うん、元のままになった。」
　「しばらく休みなさい」スティルブンスは、優しく声をかけた。

　「ありがとうございます、先生、でも、これは、宿命なんです。」
　海上では、飛び魚が、タゲットに変身しつつあった。